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NO.0005/2001.10.10

蛇喜猫賀(じゃきびょうが)2001●定期LIVE■IN 高麗神社

そのままの彼方へ

 10月7日(日)音楽集団・蛇喜猫賀(中川晶一朗主宰)がパワーアップを果たし、1年ぶりに高麗神社へ帰って来た。
 初っぱなから大地と魂とが共鳴音と化した「出合いの時に」で観衆の心を一気に彼方へと押し上げ、そのまま歓喜の呼応「イナ.ミンジャ.ノグゥイ.ソング(PNG.クォマ)」までの第一部を神事としてていねいに歌い上げた。

 折しも過激な世界情勢に連動するかようにその歌声は鎮守の森を突き抜け、遠く、どこまでも魂の叫びとなり夜空にこだましていった。

 蛇喜猫賀の音楽性はまさに神楽殿のような場所にふさわしく、中でも「鳴っている」は祖霊への思い、限りなく失われゆく命への鎮魂歌として時代に即応したものであり、肉体全体を表現手段として、地の底からからひねり出されるような朗読詩はリーダー・中川晶一朗の本領が遺憾なく発揮され、前出の「出合いの時に」と共に蛇喜猫賀の新境地を感じることができた。

 引き続いて第二部はお馴染みの曲で構成。観衆の手拍子や歓声とともに、中川流に言えば音楽の嬉しさが陽気にはつらつと、ありのままの姿で披露された。人間離れした宇宙的声音の高田淳子、天から舞降りたような清楚な無邪気さを持つ島田康子、そして今回から加わった本格派歌唱力を秘めた大島まどかの3人のボーカルもそれぞれの思いを背負いながら、持ち味を出しきり、三者三様の表現形態は今後蛇喜猫賀の中心をなしてゆくであろうと思わせるに充分だった。

 また、チャンゴ奏者としてスポット参加した中野裕子は課せられた難しいポジションにもかかわらず、自身の持つ天性の魅力の片鱗を伺わせ、将来への可能性を感じさせるとともに、蛇喜猫賀との関わりがゆく末の力となってゆくに違いない。

 更に、初めてボーカルマイクを向けられたキーボードの丸谷哲司の奏でる電子サウンドが、他の奏者のアコースティックで原初な音と響き合い、蛇喜猫賀に無くてはならない音源として、サウンド全体の深みを増していることを記しておこう。


 毎回のことであるが、蛇喜猫賀コンサートの背景には、奥武蔵に縁のある多くの人々の力を見ることができる。それは、8年前から高麗神社を中心に活動している「野神楽やまむすべ」(カワラ主宰)との密接な関係を通して、そこに出入りする人間たちとの出合い、またその後何らかの形で奥武蔵を核に出来上がった無形文化集団とでもいうさなざまなジャンルの作家や表現活動を続ける者たちが集まって、スタッフとして、開場設営からステージ作り等、有形無形のサポートを展開している。
 今回、その集団を「THE 3年2組」と名付け、流動的な人の動きが一つの形としてまとまりつつあることは特筆すべきことで、これらの人的支援無くして蛇喜猫賀の音楽は成立し得ないであろうし、また、この奥武蔵に流れる風土に根ざした有機的、かつ流動的な力が、今後の真新しい日々を生き抜くための新たな座標・活力となる可能性を大きく秘めている。その年齢を超越した集団がどのような展開を魅せるか。「蛇喜猫賀」「野神楽やまむすべ」双方に関わりを持つ中川晶一朗の手腕に期待したい。

 また、それらある種得体の知れない有機流動体に対し、常に快く門戸を開いてくれる高麗神社があればこそ、諸処の活動が成立する訳で、「心の拠点」としての高麗神社が果たす役割は大きいのである。(TA)


蛇喜猫賀2001ユニット

唄・パーカッション:島田康子/唄・ジャンベ:高田淳子/シンセサイザー:丸谷哲司/唄・和紙三味線:中川晶一朗/唄・パーカッション:大島まどか/チャンゴ:中野裕子

音響:山玉修市+外川健二/照明:柳戸勲/舞台:THE 3年2組

蛇喜猫賀ホームページ

野神楽やまむすべホームページ


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